L2TPv3 over IPSec over NGN IPv6(フレッツV6オプション)なL2VPNの真価

以前、フレッツV6オプションを利用して構築したVPN(L2TPv3 over IPSec over NGN IPv6)においては、だいたい20kmぐらい離れた拠点間(NTTの収容局は異なる)でpingのRTTが安定して5msを切れたというのを書いた。
SEIL/x86 で L2TPv3 over IPSec over NGN IPv6(フレッツV6オプション)なL2VPNを張ってみた - pirosapの備忘録

このVPN構成の利点としては、RTTが小さいため例えばDTCP-IPの制限(TTLは3以下、RTTは7ms以下)も超えないので、拠点間でDTCP-IPによる映像配信が行える。
またNTT東日本のサービスにおいて、例えばフレッツ 光ネクスト ファミリー・ハイスピードタイプの下り回線は最大200Mbpsで制限がかかるが、これはIPv4での接続の場合であり、IPv6は最大1Gbpsまで利用できる。

下記はフレッツ 光ネクスト マンション・ハイスピードタイプにて、IPv6/IPv4それぞれで下り回線速度を測定してみた一例。
IIJmio IPv6スピードテスト *1 -- 845.33Mbps

Radish Network Speed Testing マルチセッション版-β- 東京 (IPv4*2 -- 136.7Mbps

このため、フレッツ光回線のIPv4上で構築するVPNより、V6オプションのIPv6上で構築するVPNの方が帯域を多く使えることが期待できる。

最大のメリットは価格である。
例えば、上り/下り100Mbps超が利用できる(かもしれない)2拠点間のVPNを張りたい場合、これまで最も安価だったのはNTTのフレッツ光ビジネス回線とフレッツVPNワイドの組み合わせであったと思う。
ルータ等の費用は別にして、下記のような月額費用となる。

フレッツ光ネクスト ビジネス 2回線 -- 43,155円 x2 = 86,310円 *3
フレッツVPNワイド 管理者 プラン10 プラス(10) -- 11,340円 *4 *5
フレッツVPNワイド 参加者 -- 1,890円

                              • -

計 99,540円

零細企業にとっては毎日チャリでデータを届けたほうがマシなレベルである。
これが、V6オプションを利用したVPNだと下記のようになる。

フレッツ 光ネクスト ファミリー・ハイスピード 2回線 -- 5,460円 x2 = 10,920円 *6
フレッツ・V6オプション -- 無料 *7
IIJ SMF sxサービス (V6オプションのIPv6アドレス変更追従に必要) -- 3,150円 x2 = 6,300円 *8
IIJ SMF sxサービス 管理用PPPoEアカウントサービス -- 525円 x2 = 1,050円 *9

                                              • -

計 18,720円

三ヶ月でルータ(SEIL/X1)の元が取れてしまう。

ネクストのビジネス(NTT局舎までのアクセス回線占有)とファミリー・ハイスピード(アクセス回線は複数のユーザで共同利用)を同じ俎上にのせるのはどうなの、という点はさておいても、十分実用的で検討に値する構成だと思う。
もともとインターネット接続用に引いているフレッツ回線に相乗りすることができるため、新たな回線敷設の必要もない。
フレッツVPNワイドはPPPoEをVPNグループの数だけ必要とするが、V6オプションを利用する場合はルータ毎に管理用PPPoEは1つで良いため、PPPoEのセッション数を気にする必要もない。

クリティカルな用途でないVPNは、そのうちみんなこの構成になるんじゃなかろうか。
IIJの営業さんだったらバシバシ売り込みに行きたいようなサービスである。
(でもきっと、こんな細かいサービスをわざわざ売り歩かなくてもやっていける会社なのだろうなあ)