マンションへJ:COMが導入される際の工事内容がよくわからない

賃貸マンションのオーナーがマンションにJ:COMを導入するとのお知らせが先月来ていた。入居者のJ:COMへの加入は任意であるが、加入しない部屋も含め、全部屋にて工事が必要であるという。はて?
いろいろ調べてみると「営業活動の口実」であるとの噂なども見受けられたのだが、工事との名目で来る以上そこには何らかの理由があるはず。

マンションの管理会社に聞いても、J:COMの営業に聞いても具体的に何のためにどういった工事をするのかよくわからない。
地上波デジタル放送については、これまでマンションの共聴アンテナから分配されていた信号が、J:COMからのパススルー方式での受信に切り替わることとなる。*1 これは受信する部屋側では何の設備変更もいらないはずである。また、BS/CSについては同じくこれまでマンションの共聴アンテナから分配されていた信号をJ:COM側のブースターで混合して各部屋まで送るため(必ずしもこのような対応になる訳ではない)、J:COMに加入しなくてもBS/CSの視聴もこれまで通り可能であるという。
とすれば、いったい何のための工事なのか?

賃貸である以上、管理会社/オーナーからのお願いには応じないといけないので、実際何が行われるのか記録してみることにした。
工事は30分ぐらいで終了した。
工事担当と営業が2人で来訪され、工事中は営業氏の営業トークが続いた。営業活動の機会になっているのは間違いないようだ。

さて、以下が工事前のTVアンテナコンセントである。

工事後はこうなった。

同軸コンセント部分が新しくなっているのがわかるが、見た目にはよくわからないので、内部がどうなっているのか見てみる。

裏側に上りカットフィルタ*2が入っていた。裏面にはCATV上り回線帯域をカット(片方向)/ パス(双方向)を切り替える小さなスイッチがある。

TV放送はTV局からテレビ側への片方向の信号が送られてくるのみである。TV放送を見るだけであれば、地デジでもBSでもCSでもテレビがアンテナ線を通じて信号を送信することは無い。
最近の番組ではデジタル放送の双方向機能を利用したクイズへの回答などが見受けられるが、これはテレビが通信回線(電話やインターネット)を通じて信号を送信しているだけである。
このため、テレビ側から局側への信号をフィルタでカットしても何ら影響はない。

一方、J:COMで提供されているサービスには、同軸ケーブルを使用するインターネット接続サービスが存在する。これは、TVアンテナコンセントからの配線をSTB*3とケーブルモデムに分配するような形で配線することとなる。
そして、インターネット接続サービスを利用する場合、当然ケーブルモデムから局への「上り」の信号を送信する必要が出てくる。

つまりはこういうことである。
J:COMのインターネット接続サービスを利用していない世帯のTVアンテナコンセントからは、上りの信号が送信されることはない。万が一何か送られてきたらそれはノイズである。
ノイズが酷いと、インターネット接続サービスの品質が落ちるので、J:COMの契約を行わない世帯も含め、マンション中の全てのTVコンセントに上りカットフィルタを設置して回っているのであろう。
(仮に入居者がJ:COMのインターネット接続サービスを利用するのであれば、工事時にフィルタのスイッチをパス側に切り替えるだけで済む)
入居者はぶっちゃけ、工事に応じなくてもTV放送の視聴に影響はないが、J:COMのインターネット接続サービスを利用する世帯に迷惑をかけないようにフィルタの設置が求められているのだ。

(共聴設備の分配側にフィルタを挿入すれば建物内の配線上に乗るノイズも遮断できて良いと思うのだけれど、営業的な理由もあるのかもしれない)